ゲームローカライズの世界。失敗しないローカライズをするには?

本記事では、弊社のゲームローカライズマネージャーであるヤナが、ゲーム制作を手掛けるGame Wisdom社によるインタビューを受けた時の回答をご紹介します。

アルコノストでは日本のゲームだけではなく、北米やヨーロッパなど世界中のゲームを世界に向けて、日々ローカライズしています。そのため、より広い視野でゲームのローカライズ事情についてお伝えできればと思います。

 

ーローカライズマネージャーとして、アルコノストではどのような仕事をしていますか?

弊社にローカライズを依頼いただく場合、私のようなマネージャーがまず窓口になります。翻訳者や校正者を手配したり、ローカライズプラットフォームの設定(用語集や翻訳メモリの設定も含め)を行います。

ローカライズのための文字列を受け取り、ソースを渡したのと同じフォーマットで、選択した言語での結果を返す責任者です。

ーそもそもゲームにローカライズは必要なのでしょうか?

特に昨年、海外のゲーム開発者の方と話をしていて、「ゲームはもうローカルで考える時代ではない」という意見が目立ちました。それを裏打ちするようにローカライズの依頼も増えています。

最近だと、ブラジル向けのポルトガル語翻訳や、中国語の簡体字(中国本土で主に使われる。台湾や香港では繁体字が一般的)へのローカライズ依頼が増えていますね。特に中国語簡体字は、ローカライズで人気の翻訳先言語トップ5に入っています。

ーローカライズ作業には何人くらいが関わっているのでしょうか。

基本的なローカライズプロセスは、翻訳と校正に分けることができます。アプリゲームの場合、翻訳と校正を1名ずつで対応できることもあります。

しかし、ゲームの規模が大きい場合は、プロジェクトに複数の翻訳者を配置することもあります。その場合には、プロジェクト全体をまとめ、用語を統一する校正者を1人置くことが重要です。

ローカライズ版のテストでは、先ほどと同じ校正者が、テストプレイをしてインターフェイス上での見栄えをチェックしたり、ストーリーとして一貫性があるかを確認します。もしくは、第三者の校正者をにゲームをプレイしてもらい、ゲーム全体を新鮮な目で見て確認してもらいます。

ーゲームのローカライズには、どれくらいの時間がかかりますか?

ローカライズにかかる時間は、以下のような要素で決まります。

・ゲームのプレイ時間(ゲームのストーリーや内容を理解するために行う)

・ゲーム内のテキスト量

・翻訳する言語数

小規模なゲームであれば、12週間もあれば十分です。大規模なゲームだと、2~6ヶ月ほどかかります。この時間はあくまでもローカライズにおける翻訳だけの時間なので、翻訳したテキストを入れ込んでテストプレイを行うLQA作業を含めると、さらに時間がかかります。

ーローカライズにかかるコストは、多くの人が気にするところだと思いますが、実際にどれぐらいかかるのでしょう。

ローカライズのコストは、テキストの量と選ぶ言語によって決まります。翻訳後に行うローカライズ版のテストプレイについては、ゲームの時間が関係してきます。ゲーム内容が複雑で、ストーリーのバリエーションや選択肢が多かったりすると、時間がかかるため、その分コストも高くなります。

言語に関していうと、翻訳者や校正者が多くいる言語は、価格が少し低くなります。逆に言えば、ローカライザーや翻訳者が少ない言語は、コストが高くなる傾向にあります。つまり言語の複雑さというよりも、各言語の市場に対して人材がどれだけいるか、が価格の決め手となります。

ーローカライズで特に苦労したエピソードがあれば教えてください。

とあるゲームのクリスマスアップデートで、鹿が登場するシーンがあったんです。その鹿をめぐって、性別や性格、各言語でどんな名前をつけるかを考えたことがありました。これは、開発者と翻訳者が、ゲームに深く入り込み取り組んだ事例です。そのようなゲーム開発者と一緒に仕事をすると、私たちも夢中になり、ローカライズするすべての言語でゲームやキャラクターがしっくりくるよう、ひたすら時間をかけて考えぬきます。

似たようなケースで、犬の名前を考えるのに苦労したこともありました。元の言語では、非常に中性的な名前が使われていたので、言語ごとに男女に使える名前を選ぶ必要がありました。それが一匹だけならまだしも、何十匹もいたので、名前が重複しないように、名前のバリエーションを考えるのが大変でしたね。

ーローカライズで気をつけていることは?
キャラクターの特徴(口調や性格など)については、特に気をつけています。

たとえば、あるゲームで海賊のような話し方をするキャラクターがいました。ローカライズでは、どの言語に翻訳する場合でも、その口調にしなければなりません。そこで私のチームでは、何人かの翻訳者にテスト翻訳をしてもらい、いくつかの翻訳パターンを用意する、ということをしました。一番しっくりくるものをお客様もしくは、シニアレベルのローカライザーや校正者が判断するという形です。

どの翻訳パターンにしろ、翻訳の品質は高いのですが、キャラクターの特徴を生かすために、どのようなスタイルで翻訳するかが重要です。どの言語であっても、キャラの特徴がしっかりと出るように、キャラクターの具体的な設定まで、開発者に確認することもあります。

キャラクターの特徴をそのまま生かすと、他の国や文化では受け入れられないだろう、ということもあります。例えば、露出が激しい服装をしているキャラや、罵り言葉をよく使うキャラですね。画像やキービジュアルを変更するのは難しいのですが、ここはお客様と相談しながら、どこまで変更するかを決めます。

この点で重要なのが、翻訳後に行うローカライズ版のテストです。ローカライズテストでは、ローカライザーは、キャラクターのセリフが、キャラクターの雰囲気や見た目に合っているかなども確認します。

後編では、翻訳・校正後のローカライズ版のテストについて掘り下げていきます。

後編はこちら:
翻訳だけでは不十分?ローカライズにおけるLQAの重要性とは?

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