翻訳とローカライズ。どちらも同じようなものじゃないの?と混同されがちですが、両者には、大きな違いがあります。ローカライズとは何か。翻訳とどう違うのか。こうした疑問にお答えします。
ローカライズとは
ローカライズとは、翻訳先言語の地域や国の習慣や文化を踏まえた上で、製品やサービスを最適化することを言います。
もともとは、ソフトウェアを特定の言語や文化に応じて翻訳する上で使われていた言葉です。日本語では「地域化」と呼ばれたり、Localizationを略して"L10N"などとも表記されます。
ローカライズと翻訳の違い
翻訳と大きく違うのは、翻訳は文字の置き換えなのに対し、ローカライズでは、翻訳先の文化や慣習を配慮した上でアウトプットを行う点です。
例えば、ジョークや慣用句。そのまま翻訳してしまうと、意味が通らないものになってしまうので、翻訳先の言語の慣用句や同様のジョークへと置き換えるのがローカライズです。
例えば、以下の例文。
原文:Tigers rule, Hunters drool! We're gonna take you back to the school!
翻訳版:タイガーが支配する、ハンターはよだれをたらす!学校に連れて帰るぞ!
ローカライズ版:タイガースは勝者、ハンターズは弱者!最後に笑うのはタイガース!
文字の置き換えである翻訳だと、意味が通りません。一方でローカライズ版では、元の意味をくみ取った上で、日本語として意味が通じる表現に置き換えられています。
もう1つ大きな違いとして、翻訳では主にテキストが翻訳の対象になりますが、ローカライズはデザインや色、イラスト、ナレーション、動画、仕様などもその対象となります。
要はプロダクト全体を、その地域の人々が使いやすい形に最適化するのがローカライズなのです。
ローカライズの事例
ここからは、身近なローカライズの例を見て見ましょう。
コカコーラのWebサイト
日本サイトでは、有名人を起用し日本の消費者への親しみを高めている作りになっています。特に日本ではスポーツ選手や有名人などを起用したマーケティングや広告が主流のため、こうした点がサイトにも反映されていることが読み取れます。
一方でカナダ版のサイトでは、モノクロカラーを基調とし、自然の写真を用いて落ち着いた印象を与えています。
同じ会社のサイトではあるものの、各国の国民性や嗜好に応じてサイトを変えていることが分かります。
子育てアプリ「授乳ノート」
子育て中の母親をターゲットにしたWachanga社の子育てアプリ「授乳ノート」。20ヶ国以上で展開していますが、同じアプリでも国によってアプリ内の母親や子どものイラストを変更しています。
各国の現地ユーザーがより親しみを持って使える仕様にすることで、アプリの使用率向上を図っていることがうかがえます。ちなみにこのイスラーム圏向けバージョンでは、お祈りの時間を知らせる独自の機能をつけています。
展開先の国のユーザーの要望に応じて、独自の機能を追加したり仕様を変更することも、ローカライズの一部と言えるでしょう。
プレステ4のゲーム「ウィッチャー3」
特に英語からアラビア語版へローカライズを行う際に、宗教で禁忌となっているお酒や裸体の映像の差し替えや、英語の侮辱表現をよりマイルドな表現に置き換えるといったローカライズが行われました。
以下の記事では、実際のアラビア語翻訳者によるローカライズの体験談や苦労話などを紹介しています。
アラビア語翻訳者に聞いた!中東市場へのゲームローカライズで気をつけたい4つのポイント
ネットフリックス
ローカライズの大きな特徴として、テキストだけではなく時にはコードやデザインまでも変更することがあります。アラビア語は右から左へ読むので、アラビア語版のネットフリックスでは、ロゴやメニューの位置が真逆になっています。
また同じテキストでも、翻訳先言語によって原文より極端に短くなってしまったり、長くなってしまいます。テキスト長すぎるとボタンからはみ出てしまったり、逆に短すぎるとスペースがあまりすぎたり。
アラビア語版のボタンテキストは、英語に比べて非常に短くなっているため、ボタンの長さも合わせて短くなっています。この場合、長い訳語で置き換えれば、ボタンの長さを変えずに済ませることも可能です。
ローカライズでは、最終的にインターフェイスでどのように表示されるのか、といったことも考えて訳語を決めたり、ボタンの長さを調整したりすることも含まれます。
ローカライズの重要性とは
逆にローカライズを行わないとどうなるのか。それを教えてくれる一例があります。
プレイステーション4の人気RPGゲーム「ペルソナ5」では、登場キャラクターの靴に旭日旗が描かれていたのですが、韓国向けにローカライズする際には、旭日旗を削除しています。
しかし、韓国向けのプロモーション動画では、誤って日本版の動画が流れてしまい、靴に描かれていた「旭日旗」が韓国ユーザーの間で大きな批判を巻き起こしました。
ローカライズを行うことは、こうした炎上や批判を避けることだけが目的ではありません。現地の人にささるローカライズコンテンツは、ユーザーの信頼やエンゲージメント率を高めるのにも重要です。
Eコマースサイトを例にあげて見ましょう。サイト全体は日本語になっているけども、サポートが英語のみの対応だったり、価格が日本円ではなかったりする場合。多くの人は、「本当に信頼できるサイトなのかなあ」と思うかもしれません。
一方で、海外の企業であっても商品表記やサポートがすべて日本語で対応している場合には、より多くの人が安心してサイトで商品を購入するでしょう。
つまりローカライズは、より良い製品やコンテンツを作るのに欠かせない作業と言っても過言ではありません。
ローカライズは消費者の信頼やエンゲージメント、さらに言えば収益にも影響するものなのです。
現地ユーザーに対するこうした細かやな配慮。そこにローカライズの意義があると言えるでしょう。
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