Seiwa Nishida
Posted by Seiwa Nishida
on 2022/10/17 1:50:59

徹底検証!機械翻訳の精度ってどうなの?人間翻訳と比較してみた

精度が上がっていると言われる無料の機械翻訳だが、その精度はどれぐらいなのだろう。高い精度の機械翻訳があれば、人間の翻訳者に依頼する必要はないのだろうか。

そうした疑問に答えるため、様々なタイプの文章を機械と人間で翻訳し、その結果を比べてみた。

今回の検証で使用したのは、無料の機械翻訳で特に精度が高いと言われているDeepL翻訳で、日本語の原文を英語に翻訳していく。

1.スラング・略語

機械翻訳はどこまで翻訳できるのか。その能力を知るために、まずはあえてスラングや略語といった言葉をちりばめた文章を用意。ポイントは、チャラい食レポワンチャン、神対応ヒットするなどを機械翻訳がどう訳すか、である。

原文
ちょっとチャラいイケメンが食レポする動画を見たんですよ。動画の店員さんが神対応してて。あれって英語字幕をつけて、世界配信したらワンチャン、ヒットするとマジで思うんですよ。あ、わからない人はググってくださいね。

DeepL翻訳
I saw a video of a handsome, slightly flirtatious guy doing a food report. The waiter in the video was a godly guy. I really think it would be a hit if they put English subtitles on the video and distributed it worldwide. If you don't know what I'm talking about, please Google it.

懸念されていたスラングや略語は、なんとか翻訳されているが、やや違和感がある。略語やスラングを正確に訳すのは、機械翻訳にはまだ難しいのかもしれない。

では、ここで人間の翻訳者による翻訳を見てみよう。

人間翻訳
I saw a video of slightly flashy handsome guy doing a food report. The staff in the video were providing incredible service. I think that if we added some English subtitles and streamed this worldwide, it would be a chance at having an absolute viral hit. Oh, and if you don't know what I'm talking about, please Google it.

さすが人!というべきか。神対応という英語にない表現を、前後の文脈も意識して”providing incredible service(素晴らしいサービス)と置き換えている。文脈に沿った自然な言葉選びができているのは、もちろんのことだが、一方で機械翻訳とそれほど変わらない部分もある。

2.アニメ風のセリフ

アニメや漫画に出てくるキャラクターは、一風変わった話方をすることでお馴染みである。こうした特定の世界で使われる言葉遣いを、機械翻訳はどう訳すのだろうか。

原文
お前、よくその程度で俺に挑もうと思ったな。
っく。くそう。こんなはずでは。
そうそう、あなたももうおやめなさいな。わたくしたちに挑もうなんて、100年早い。
てめえらなんて、10秒でめちゃくちゃにぶっ倒してやる。
あたいにまかして!

DeepL翻訳
You, how dare you challenge me like that?
Damn. Damn. It wasn't supposed to be like this.
Oh, yeah, you should stop now. You are a hundred years too young to challenge us.
I'll beat you guys to a pulp in 10 seconds.
Leave it to me!

比較的短いセリフで、難しい言葉もないのためか、機械翻訳ではそれなりに意味が通じる文章になっている。これなら、機械翻訳を使うのもありなのでは・・・と思いきやである。

人間翻訳
You had quite the nerve to challenge me with that performance.
Ugh. Damn it! I didn't think something like this would happen.
Oh yeah, you should just give up already too. Come back once you can put up more of a fight against us!
I'll beat all of you to a pulp in the blink of an eye!
Leave it to me!

ちなみにこちらの人間翻訳に限っては、上級者レベルの翻訳者に依頼をしてみた(他の人間翻訳は、通常品質の翻訳者)。ここにきて鍛錬された人間の実力というのを見せつけられる。

10秒で倒してやる!というところを人力翻訳の場合は、10秒という表現を使わず"blink of an eye(瞬きする間=瞬時)というこなれた表現にしている。

機械翻訳では、そのまま”10という言葉が使われていた。また、っくという言葉にならない文字も、機械では”Damn”としか表現していなかったが、人力では”Ugh. Damn it! “とさらに情景が思い浮かぶような表現になっている。

ここでわかったのは、人間の翻訳者(特に上級者レベル)だと、分かりやすく伝えるために、あえて言葉を追加してみたり、表現力の高い言葉をチョイスすることが分かる。例えるならば、機械翻訳は、原文という事実をそのまま伝える新聞社のような文体。人力翻訳は、表現豊かな小説のような文体、といったところだろうか。

3.ビジネスメール

最後にビジネスメールを検証してみたい。スラングやアニメ風のセリフに比べて、比較的クセのない言葉が並んでおり、機械翻訳ならそこそこうまく翻訳できるのではないか。

原文
お世話になっております。サンプル会社の森山と申します。

この度は、入金のご連絡につきまして、確認にお時間を頂戴し、また何度もお問い合わせにお手数をおかけして申し訳ございませんでした。

度々お手数をおかけしておりますが、引き続きよろしくお願い申し上げます。

DeepL翻訳
Thank you very much for your help. My name is Moriyama from Sample Company.

I am writing to inform you that we have received your payment.We apologize for the time it took for us to confirm your payment and for the many inquiries we received. We apologize for any inconvenience caused.

Thank you again for your patience. Thank you for your continued patience.

期待に反し、機械翻訳の苦戦が見られた。助長的になりがちな日本のビジネスメールをそのまま訳すと、英語では同じような文章を繰り返したり、英語のビジネスメールとしては、かなり違和感があるものになる。

具体的には、お世話になります"が"Thank you very much for your help(ご協力いただきありがとうございます)"となっていたり、"度々お手数をおかけしておりますが、引き続きよろしくお願い申し上げます"という部分は、"Thank you"という表現が続けて出てきている。

では人が訳すとどうなるのか。

人間翻訳

I hope this e-mail finds you well.

I am Mr. Moriyama with Sample Company.

Thank you very much for contacting us in regards to the payment. We are terribly sorry to have taken so much time to confirm the payment and for the many times we had to contact you. We apologize for any inconvenience we caused.

We apologize for any inconveniences we may have caused, but we look forward to your continued support.

人間翻訳だと、“お世話になります”の部分が、"I hope this e-mail find you well"という英語のビジネスメールにおいては、一般的な表現に置き換えられている。

最後の
度々お手数をおかけしておりますが、引き続きよろしくお願い申し上げます。という文章に関しても、機械では同じような表現を機械的に繰り返すだけだが、人力翻訳の場合は、申し訳ないという気持ちを誠心誠意、表現しているような印象を受ける。

同じ謝罪のメールだが、人力翻訳の方が謝罪メールとして印象が良い、と個人的には感じた。

人力翻訳の場合、情報が伝わればいいというよりも、この文章を通じて何を達成したいのか、というような想像力が働いているように思える。

検証結果

検証結果としてわかったのは、ある程度の平易な文章であれば人間翻訳と機械翻訳にあまり差がないということ。ただ、今回検証したのは、日本語→英語のみなので、データ数が少なさそうな別の言語ペアだとまた違った話になってくる。

一方で文化的な独特の言い回しや表現の豊かさに関しては、やはり人間の翻訳者が強みとするところだろう。

また、人間翻訳の場合だと、料金が高い、時間がかかるというのが一般的なデメリットとしてあげられる。しかし、プロの翻訳者だからこそできる表現力やクオリティを考えれば、十分にお金をかける価値はあると感じた。また人間翻訳であっても、依頼から30分ほどで翻訳が納品されたので、お金を払ってすぐにハイクオリティな翻訳が手に入るのならば、悪くはない。

機械翻訳の特徴

・無料である程度、高精度な翻訳ができる
・オノマトペやスラングなども翻訳できる
・ネイティブが見ると不自然な表現がややある
・文化的な独特の言い回しは、直訳や分かりづらい文章になる

人間翻訳の特徴

・料金はかかるが、自然な表現に翻訳
・文脈に基づいた適切な言葉選び
・プロの翻訳者に頼むと、文章表現がかなり洗練されていて、人の心をぐっとつかむ美しい文章になる

意味さえ伝わればいい、という場合であれば機械翻訳で十分だろう。一方で、相手にきちんと伝えなければいけない場面においては、人間翻訳が優位と言えるだろう。機械翻訳か、人間翻訳か、という選択ではなく、目的に応じて両者を使い分ける方がいいのかもしれない。