この記事は、記事の後編です。前編はこちら
ゲームローカライズの世界。失敗しないローカライズをするには?
前回はゲームローカライズの中でも、翻訳の部分を中心にお話ししました。今回は翻訳が終わった後に行う、ローカライズ版のテストについて掘り下げて行きたいと思います。
ーローカライズ版のテストとは具体的に何をするのでしょうか?
ローカライズの最終段階として、ローカライズ版のテストを行っています。これは、翻訳したテキストが実際のゲーム内で、どのように見えるかを確認する作業です。完成した翻訳を開発者に渡し、開発者がゲームに実装した後、このプロセスが始まります。
テスターには、ゲームのテスト版にアクセスしてもらい、すべての画面をひとつひとつチェックしてもらいます。翻訳したテキストが正しく表示されているか、ボタンからはみ出ていないか、ゲームの文脈に合っているか、などを確認します。
開発者がゲームに直接アクセスできない場合は、スクリーンショットを使います。ゲームが特定のプラットフォーム、例えばSwitchの場合、ローカライズに携わったテスター全員がSwitchにアクセスしてゲームをプレイできるとは限りません。その場合、スクリーンショットを確認し、テスト結果のレポートを作成することになります。
テストが終わるころには、ローカライザーが発見した問題点やバグをまとめたレポートが開発元に届きます。問題がある場合は、ローカライズプラットフォーム上で翻訳を修正し、更新した翻訳ファイルを開発者に送ります。
ーローカライズテストを行わないとどうなるのでしょう。
テキストがボタンや吹き出しからはみ出していたりすると、ローカライズテストをしていないということがすぐにわかります。
もう1つは、ゲームの文脈にあっていない翻訳ですね。例えば、同じ”戻る”ボタンでも、ゲームの前のステージに戻るのか、別のステージに戻るのか。ゲームの文脈を理解していれば、きちんと翻訳できたはずなのに、結果として同じように”戻る”と訳してしまう場合ですね。その結果、”戻る”ボタンが2つも並んでしまい、プレイヤーを困惑させてしいます。
あと、キャラクターが話している言葉と字幕があっていないこともあります。「友達と遊びに行く」と話しているのに、字幕では「ご飯を食べに行く」となっているというような場合です。
ーナレーションのチェックもローカライズテストでできるのですか?
基本的にローカライザーは、字幕が原文と対応しているかどうかをチェックします。ただナレーションの場合は、すでにゲームに実装されていないと発見できません。
ゲームローカライズだけでなく、動画のローカライズでも起こることです。吹き替えは、字幕とは少し違ったアプローチが必要です。字幕の場合、どんな言葉を使うか、字幕の長さはどれくらいかを考えます。吹き替えの場合は、キャラクターの話し方、話すときの動きなどを考慮します。
ーローカライズ版をリリースした後は?
ゲームによっては、アップデートが定期的に行われることもあります。ゲームにもよりますが、毎週アップデートされるゲームもあれば、シーズンごとに行われる場合もあります。
こうしたアップデート分のローカライズは、先ほどお話ししたプロセスとは、少し違う方法で行います。事前にこうしたアップデートが起こることがわかっている場合、ローカライズツールと、お客様の開発システムを連携することができます。そうすると、ツールに文字列を直接送るだけで、自動的にローカライズが開始されます。
通常であれば、私のようなローカライズマネージャーがファイルを受け取って、お客様に翻訳した文字列を送る、という流れがあるのですが。ツールを使うと、こうした手順を省くことができます。
またアップデートに伴い、アプリストアの情報を変更したり、SNSにのせるコンテンツを翻訳したいといった要望もあります。そうした場合には、弊社が提供しているオンライン翻訳ツールNitroの活用いただくこともあります。こちらのツールだと、ローカライズよりも安く、早く翻訳できます。
機械翻訳で翻訳したテキストをネイティブ視点でチェックして欲しい、現状の翻訳プロセスを効率化させたい、など翻訳やローカライズに関する幅広いご相談を承っております。以下のお問い合わせフォームよりご連絡ください。