ローカライズといえば、文字を翻訳して入れ込むだけ、と思われがちですが、ローカライズの品質を向上させるのに欠かせないローカライズテストというプロセスも含まれています。この記事では、ローカライズテストとは何か、そのプロセスや重要性などについてご紹介します。
ローカライズテストとは?
ローカライズテストとは、翻訳されたアプリ、ゲーム、Webサイトなどで、訳語がきちんと表示されているか、訳語に問題がないかを確認することです。 ローカライズテストでは、日付や時間の表記、UI要素、通貨、測定値、句読点、改行などもチェックされます。
ローカライズテストは、アプリやゲームのローカライズ版がユーザーに提供される前に製品内のテキスト要素に含まれる意味的および技術的な誤りを特定して排除するのに役立ちます。
似たような言葉に、LQT(ローカライズ品質テスト)とLQA(ローカライズ品質保証)がありますが、両者はほぼ同じ意味を持つものの、若干の違いがあります。 LQAは一般的にはテスターがローカライズされた文字列を元の文字列と比較するものですが、LQTはそれよりも製品内部のローカライズをチェックすることを指しています。
ローカライズテストと機能テストの違い
どちらのテストを最初に終えるべきでしょうか? 機能テストとローカライズテストの両方を同じ人員に割り当てられるのでしょうか? これら2種類のテストがどのように共存しているのか、両方の役割に適した優秀なプロを雇う際にどんなスキルを求めるべきかを説明します。
機能テスト
機能テストは、各アプリケーション機能の適切な動作を確認するものです。 機能テストでは、Webサイト、ゲーム、アプリが事前に定義されたパフォーマンス基準に照らしてチェックされます。 簡単に言えば、この種のテストではアプリまたはシステムが技術的な要件に沿って機能しているかどうかが調べられます。
機能テスターには確かな技術的経験を積んでいます。 高いスキルセットのほか、この種のテスターには細部への注意力とプロジェクト管理スキルが求められます。 ただし、製品の背景情報やターゲット市場の文化的側面を細部まで掘り下げることは求められていません。
ローカライズテスト
ローカライズテストは機能テストとは異なり、技術的な作業というよりも、慎重に内容を読み、それがどのように認識されるかをチェックするものです。
この種のテストは、あらかじめ決まった台本を使用して製品を調べるか、使用中の製品のスクリーンショットをチェックする形で実施されます。 ローカライズテスターは主に次のような不具合を探します。
ここまでの内容をよくお読みになった方は少し混乱しているかもしれません。 上記リストの最後の項目は、機能テストで対処すべきバグのように思いませんか? そうです。そこがまさに機能テストとローカライズテストが交差する部分なのです。 しかし、ローカライズテストのみに頼ることはおすすめしません。
ローカライズテストは機能上のバグを発見するのに役立ちますが、ローカライズテスターにはコードを変更する技術的経験がありません。 逆の場合も同様です。機能テストはどんな製品のローカライズ版にも不可欠なものですが、機能テスターが翻訳先言語を熟知しているネイティブスピーカーでないことは一般的です。 従って、ローカライズのチェックを行うネイティブスピーカーがいなければ、製品をターゲット市場の消費者に使ってもらう準備ができているとは言えません。
端的に言えば、機能テスターはローカライズテストをうまくこなすことはできず、ローカライズテスターは機能テストをうまくこなせません。これら2つの業務には以下の表のように異なるスキルセットが求められるためです。
そのため、費用を最小化することに注力しすぎないようにしてください。ご覧のように、機能テストとローカライズテストは製品の別々の側面をチェックするものだからです。 ですから、両分野の専門家が得意とするものは異なっています。 翻訳先言語のネイティブスピーカーは、皮肉などの詳細な意味合いや、道徳的に正しいジョークといった詳細な文化的差異をもっともよく理解しています。
自動化、AI、ローカライズテストサービス
機能テストでは自動化と手動操作を組み合わせることが一般的であり、自動化したテストを作成して作業を高速化することが推奨されています。 定型作業を単純化する便利なツールもローカライズでは広く使われています。 用語集、コンピューター支援翻訳(CAT)ツール、翻訳管理システム(TMS)は、翻訳者が最初に行う作業の大部分を支援します。 しかし、ローカライズテストの場合はそう簡単にはいきません。作業の大部分を行うには、ターゲットとする文化に属する翻訳先言語のネイティブスピーカーが必要になります。
AlconostのローカライズチームリードであるAnya Zanevskayaは、ローカライズテストへのAIの導入について次のような意見を述べています。
「自動化というものはどこからともなく現われたデータを基にしているのではなく、その裏では今も人間による入力が行われていることに留意する必要があります。 AIに機能上の不具合を検出して報告するように訓練することは可能かもしれませんが、プロジェクトの言語的側面を考慮すると、全体像を把握して背景情報を認識できる注意深いネイティブスピーカーを参加させるのが現時点でも最良のシナリオです。 実際、弊社はいくつかのプロジェクトでAIベースのテクノロジーを使用していますが、そこでも最終結果をブラッシュアップするネイティブスピーカーの編集者を常に参加させています。 これらを考慮すると、現時点ではローカライズテストで人間をAIで置き換えることは不可能だというのが私の考えです」
ローカライズテストはローカライズのワークフローで最後のステップとなるものですが、公開前の翻訳に最後の仕上げを加えているのは人間です。
自動化の主な目的は、作業を単純化してお客様の支出を減らすことです。 しかし、実際にはお客様がローカライズとローカライズテストを準備する段階で支出をカットすることは可能です。
ローカライズテストの準備方法
準備を省略してはならないとは言いませんが、 ローカライズテスト会社は一般的にローカライズテストサービスに対して時間料金を設定しているということを考慮すべきです。 ローカライズ品質保証テスターがダイアログのある1つの画面をチェックするのにゲーム全体またはアプリ全体をしらみつぶしに調べなければならない場合、余計な時間に料金を支払うことになります。 事前に作業を単純化することで、コストを節約できるのです。
ローカライズテストを外注すべき3つの理由
ほとんどのサービスに当てはまりますが、自分が高いレベルで処理できないことは、必要なソリューションの適切な専門知識を持つ個人や企業に任せるのも1つの方法です。
1.適切な経験を持つネイティブスピーカー翻訳者
ローカライズテストを言語サービスプロバイダーに発注すると、テストは最初に翻訳先言語のネイティブスピーカーのプロ翻訳者によって行われ、その後はプロジェクトの分野での経験に応じて割り当てられたベテランのテスターによって行われます。
2.スムーズなワークフロー
ローカライズベンダーは最新の翻訳管理システムとローカライズ作業をレベルアップする手法を使用しています。 言語サービスプロバイダーに外注すると、ローカライズは便利なワークフロー管理ツールを提供するクラウドプラットフォーム上で管理されます。 ローカライズ担当者はスケジュールを設定し、チームはそれに従って作業を進めます。
また、ローカライズサービスを発注した後、ローカライズテストにも同じ翻訳者チームを使用すると時間を節約できます。 そのチームはすでに背景情報を把握しており、製品の重要な情報を知っているからです。 さらに、ローカライズ担当者はローカライズテストの優先順位と主な目的を整理するため、適切な質問を行います。そうすることで、テストに割り当てられた時間を適切に管理できます。 これは、コストを削減するのに効果的です。上述の通り、ローカライズテスターは一般的に時間ベースで支払いを受けていますので、時間を節約すると資金も節約できます。
ベテランのローカライズ担当者はさまざまな言語ペアで発生する問題を把握しており、真っ先に考慮すべき微妙な言語間の差異を見極めます。 たとえば、日本語には単語間にスペースがないという特徴があります。 英語から日本語にローカライズする際は、この事を考慮して段落や文字列に特別な注意を払う必要があります。 翻訳先言語のある側面をチェックすることを優先し、スムーズなローカライズテストのワークフローを確保するのはローカライズ担当者の役目です。
3.最小限のやりとり
さらに、発注者が自発的に関わるのは、打ち合わせとローカライズ作業を設定する初期の段階だけです。 その後はローカライズ担当者と連絡を取り合うだけで、ローカライズ担当者が他のローカライズチームメンバーとのやりとり、納期の設定、ワークフローの監視を行い、必要に応じて重大な疑問を明らかにします。
まとめ: ローカライズテストが価値ある投資である理由
人間はコミュニケーションにとって成長する社会的動物ですが、そのコミュニケーションは文化によって異なります。 製品とエンドユーザーとのコミュニケーション方法によってユーザーのロイヤルティは決まります。 ローカライズは製品でユーザーの言語を使用し、攻撃的あるいは不適切だと思われるジョークを排除し、現地のユーモアを効果的に取り入れるために不可欠なものです。 ユーザーが高品質な製品に満足して使い続けていれば、その友人にも製品を紹介するのは間違いないでしょう。