アプリを海外展開する際に、知っておきたいポイントや注意点を具体的な事例を踏まえながらご紹介します。
海外展開となると、とりあえずアプリを英語にローカライズすればいいんじゃないか、と思うかもしれません。確かに、英語は世界で最も話者が多い言語です。しかし、英語話者の内訳を国で見ると、トップがアメリカ、ついでインド、パキスタン、フィリピンとなります。アメリカ以外は、英語を話す人は多いですが、同時にヒンディー語やウルドゥー語、タガログ語といったように、必ずしも英語のみを話す人々ではありません。
むしろこうした地域を狙うなら、英語よりも現地の公用語にローカライズする方が良いでしょう。実際に、65%のユーザーが、クオリティが低くても自分の言語でWebサービスを利用する方が安心と回答している調査結果も出ています。
話者数が多い英語だと、より大きな市場にリーチできるように見えますが、誰もが参入しやすい市場なため、カテゴリによっては競合性が高くなり、アプリが埋もれてしまうことがあります。
ただ、最初の翻訳言語として英語を選ぶメリットもあります。日本語から、ヨーロッパ言語やアジア言語(ベトナム語、ヒンドゥー語など)へ翻訳するとなると、翻訳者や需要の関係で、料金が割高になる傾向があります。一方で、英語からの翻訳だと、翻訳者も多く、多くの言語に翻訳できる可能性が広がります。
よって、まずは英語に翻訳してから、他の言語へと展開していくという方法を取るのもありでしょう。その場合注意したいのは、英語でのローカライズをしっかりと行うこと。元となる英語のローカライズが低品質だと、他の言語へ翻訳する際にも、影響が出てしまうからです。
アプリの使用環境も国によって大きく違います。世界全体で見ると、Androidユーザーの方が圧倒的に多く、日本のようにiPhoneユーザーの方が多い国はまれです。
中国だとGoogle Playが使えないため、Tencent社が運営する「応用宝」など独自のAndoidプラットフォームが存在していたり、韓国ではONE STOREという独自のプラットフォームが昨今シェア率を伸ばしています。
また、国によっても人気のジャンルが違います。以下は、Alconostが独自に調査を行った結果です。
アジア圏で人気のアプリジャンル
日本:RPG、シミュレーション、アクション、パズル
韓国:RPG、アクション、スポーツ
中国:スポーツ(eスポーツ)、RPG、ストラテジー
台湾:RPG、アーケード、マッチ3
香港:アクション、アドベンチャー、ハイパーカジュアル
もし海外展開を見据えてアプリ開発を行うなら、ターゲット国に合わせてジャンルを選ぶこともできますし、言葉が少なく直感的に遊べるようなアプリを開発するのもありでしょう。
ローカライズでは、翻訳ではよりも広い範囲をカバーします。例えば、慣用句や計測表記(キロ、インチ、メートル、ヤードなど)も含めて、展開先の言語に合わせて適用させます。文字だけでなく、色やイラストも変更するケースもあります。
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ローカライズで重要なのは、展開先の言語で自然な表現に置き換えることです。文字通りの翻訳だと、意味が通じなかったり、ときには展開先の文化にそぐわない表現となり、低評価につながってしまうこともあります。
またローカライズでは、LQAという作業もあります。LQAでは、翻訳したテキストをアプリに入れ込み、UIにきちんと収まっているか、アプリ全体で整合性のある翻訳になっているかというチェックを行います。
本や映画、文書など古くからある分野であれば、翻訳だけでも十分でしたが、アプリやゲームのようなUIも絡んでくる分野の場合、こうした見栄えのチェックまでを考える必要があります。
2022年の調査によると、世界で最もダウンロードされたアプリは、TikTokでした。TikTokの親会社を創業した張一鳴氏は、当時「アプリの成功のためには海外展開は必須」と考えていたそうです。世界人口の5分の1を誇る中国の会社ですら、国内だけでは成功できない、というビジョンを持っていたのは驚きです。
Alconostでは、2018年末からTikTokアプリのローカライズに携わっています。同アプリでローカライズを行ったのは、70以上の言語です。通常のご依頼だと、多くても30ほどの言語なので、70という数字がいかに多いかがわかります。
2019年を境にTikTokのアプリグローバルランキングが大幅に伸びています。もちろん、ローカライズだけが理由ではありませんが、多くの言語で利用できることで、ローカライズがアプリ成長の一助となったという見方もできると思います。
以下は、TikTokのユーザー数国別ランキングです。
1位:アメリカ(英語)
2位:インドネシア(インドネシア語)
3位:ブラジル(ポルトガル語)
4位:メキシコ(スペイン語)
5位:ロシア(ロシア語)
6位:ベトナム(ベトナム語)
7位:フィリピン(タガログ語)
8位:タイ(タイ語)
9位:トルコ(トルコ語)
10位:サウジアラビア(アラビア語)
英語圏はアメリカだけで、他の国は全て言語が違うことがわかります。そもそも、こうした言語で使えなければ、使うユーザーも少ないわけで、多様な言語で使えるということが、大きな強みにもなるということが言えます。
アプリの場合、リリースした後もアップデートが頻繁に行われます。その度に、ローカライズをするとなるとかなり大変です。言語数と比例して、作業も増えるので、継続的なローカライズをどう効率的に行うかを考える必要があります。
そうした場合には、ローカライズ作業を自動化できるツールやローカライズ会社に任せてしまうのも1つの手です。通常の翻訳会社や個人翻訳者の場合だと、テキストの翻訳のみの対応になってしまうこともあります。
ローカライズ会社であれば、アプリの開発ファイルで直接翻訳を行ったり、アップデート時にも迅速で対応できたりと、アプリ開発環境に合わせたサービスを受けることが可能です。
煩雑なローカライズを専門会社に任せてしまうことで、開発者や担当の方は、本来の業務に集中することができるでしょう。
Alconostは、アプリに特化したローカライズの専門サービスを提供しています。対応言語は100以上で、TikTokなどグローバル企業のアプリから個人開発アプリまで、さまざまな規模に応じたカスタムサービスをご提案しています。